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どうもはじめまして、てんてんです。

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わたしの生まれは、島国日本のなかでも小さい小さい孤島です。


海はすぐそこです。

東の窓からはいつも波の音が聞こえます。
水平線からゆっくりとお日様がみえます。
汽笛がぼーっとなります。
風が雨戸を揺らします。
潮気で窓枠が錆びついています。
夜の海はごうごうと唸ります。

いつもいつも海を眺めながら過ごしました。


海辺は底知れない謎にあふれています。

はてしなく満ち引きを繰り返す潮の流れ。思いがけず高く打ちあげる波。ところどころ冷やりとしている水の底。浮いている人。沈んでいく人。打ち上げられていく海草。どんどんと沖へ流されていく浮き輪。石にへばりついた貝。ぬるぬるした浅瀬の藻。じりじりする肌。べたべたの髪。からからののど。

毎年かならず誰かが海に消えていきます。漁船とともに消えていくこともあります。

お盆を過ぎたら誰も泳ぎません。死んだ人や魚が足を引っ張るのだと言います。それは島の大人みんなが子供に言い聞かせます。

そうして誰もいなくなった海は空しく泣きます。
ごうごうと唸ります。


山もすぐそこに切り立っています。

裏庭からけもの道が山へ続いています。
空気がひんやりしてきます。
土はいつも湿っています。
蝉がすごい勢いで啼きます。
猿に出会うこともあります。
とても警戒しています。

少し高台からあたりを見下ろしてみます。

どこまでも広がっている海。かすんでいる水平線の向こう。
どんな世界があって、どんな人が住んでいるんだろう、そう思うだけでどきどきしてきます。

こうやっていつも海の向こうを眺めていました。期待と、そして大きな不安とともに。


港から出ている旅客船は一日に五便。ゆっくり1時間半かけて大きな街まで行ったり来たり。
雨でも嵐でも出航しますが、霧が深いとすぐに止まります。港でぼんやり船が出るのを待ちます。


12歳のときに島出を決心し、15歳でひとり、島を後にしました。

不安よりも好奇心のほうが先でした。
世界の大きさを知るには、まず海を越え、自分自身で歩かなければわかりません。テレビや本で知ったような気がしても、本当の感動や不安はわかりません。

船はすごい勢いで水面をすべり、わたしを遠くへ運んでいきました。いつもより長く波に揺られているようでした。島ははるか向こうにかすんで見えなくなりました。


そして今も、島は海のずっと向こうです。

決して帰ることのできない遠い遠い場所です。


島育ちのわたしはこれからも大地に根を張ることなく、つねに潮の流れを感じながら生きていくのだと思います。
遠くにみえる水平線を眺めながらゆらゆらと放浪していくつもりでいます。
 
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まずまずてんてん
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HN:
てんてん-TEN TEN
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性別:
非公開
自己紹介:
日本生まれ
カナダ大陸東南あたりに生息
比較的温暖な緑地を好む
雑食型(主に草食、ときどき肉)
群れない
種子を残さない
でもそれなりに依存型

「三味や太鼓で大騒ぎ」が得意
ひにひにてんてん
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